--Reversible--





【AM.08:50】



「ーー黒命が動きました」



「起きて第一声がそれってどうなの」



まだ思考がぼんやりとする中。無理やりたたき起こされてハキハキと告げてくるこの声にイライラしてしまう。



朝は弱いんだ。できればやんわりと、やーんわりと起こしてもらいたいのだけれど。



「起床が遅いです」



時計を見れば、8時を過ぎた頃。




「昨日仕事で遅かったんだよ」



この仕事が地味にどれだけ体力を削られるのか、凡人のお前には想像できないだろ。





眼を擦り顔を左右に振れば、無表情で俺を見下ろす女はバサバサと紙切れを俺の上に落としてきた。


「おい」





「詳細です」



無表情で見下ろす女を睨んでから、それらを手さぐりで手繰り寄せてぼやけた視界に目を細めてみる。



寝起きでこれかよ。


ビルで遺体?つらつらと並べられている文字の羅列に目を通し、女を見上げる。




「……まだ黒命だとわかんないんじゃない?」



何これ。ただの不審死じゃん。

いつもどうやって手に入れてんのか知らないけれど、数時間前の出来事のはずなのにすでに細かい資料。




仕事が早い点はさすがだと思う。53歳でリストラねぇ。




ってか。






「自殺じゃない?」



「あなたはバカですか?」



「はぁ?」




女を睨みつければ、無表情で見下ろしてくる。バカとは何だと?





「おねーさんさ、あんまり言いすぎると命、奪っちゃうよ?」



へら、と右手を向けながら笑って言う。



だが、この鉄仮面は相変わらず無表情で。

……つまんねぇ。

今までのおねーさんたちはこの一言でびびってたんだけどなぁ。

「あなたは”奪う”力は使いませんから」




「”使わない”だけで”使える”んだよ」





「使った瞬間機関行きですから」


「おねーさんは死んじゃうけどね」


「私の命より、貴方は自由を選ぶでしょう?」






ここでの生活を自由と呼べるのなら、ですけど。







とは言わず、おねーさんに笑顔で返す。


「つまんない」