買って貰ったくせに、憎まれ口を叩く。


うだるような暑さのせいか、レモン味のかき氷を口に含むと冷たい感覚が喉を潤すと同時に、生き返ったかの様に身体が反応して元気を取り戻す。


「…っん、美味しっ!」


「素直で宜しい!」


そう言ってグリグリと頭を撫でられ、汗でベタついている髪の毛が乱れる。


ベタついている髪の毛を触れられたのが嫌だ。


佐野の大きな手に汗がついてしまった事と、見れば分かる事かもしれないが・・・こんなにも汗を
かいている事実が恥ずかしい。


我が校の生徒指導が目的だが、佐野とこうして二人きりで花火大会に来て、かき氷を食べているなんて今までには一度もなかった。


生徒に見つからないように、更には指導員のワッペンが見つからないように・・・、屋台がなくなった人通りが少ない場所を選んでかき氷を食べる。


その行為自体が誰にも知られたくない、ひやかされたくない、付き合いたての高校生カップルみたいな初々しい感じがした。


「…佐野は学生時代に花火大会とか、彼女と行ったの?」


「んー?行った事ない。友達とは行ったけど…」


「そっか…」


「なに何?気になってる?俺の事…?」


「そ、そんな訳ないでしょ!佐野なんかに興味はないんだからっ」