花火大会の場所に着いてからは二手に別れて、佐野と二人でたわいのない話をしながら歩いているが、夕方だというのに意識が遠くなりそうな程に暑い。


花火大会が終わるまで外に居なくてはならない事が、とても苦痛に感じる。


「大丈夫?暑くて化粧が落ちちゃうんじゃない?」


「…っるさい!佐野には関係ないじゃん!」


左腕に学校名の入った"指導員"の腕章をつけているが、汗をかいた上にビニール素材の為、二の腕に張り付いてしまっている感触がする。


額にもじんわりとした汗をかいていて、ハンカチで拭き取りながら歩くが、きっと化粧もとろけているんだろうな…とは思うが、佐野には指摘されたくなかった。


意地悪な佐野の事だ、とろけて実際に化粧が落ちているに違いないから指摘したんだ。


いちいち口の減らない男だ。


「かき氷二つ!」


「……え?」


ムスッとしながら佐野の後ろを歩いていると、出店が並んでいる場所で佐野が急に立ち止まり横にそれた。


シロップかけ放題のかき氷店の前で立ち止まり、二つ注文していた。


「ホレ、好きなのかけていーんだって!早くしないと溶けるから!」


「……怒られても知らないからっ!」


「暑いから、熱中症対策だと言えば大丈夫だって!」


「……楽観主義ね、馬鹿とも言うけど!」