そしてクレープを食べ終えたその時、美桜が口を開いた。

「…あのさ、桜は今好きな人とかいる?」

美桜が恋話をしてきたのはそれが初めてだった。

「…いないよ。」

「そっか…。」

恋をまだ知らない私は、誰かを好きになった事なんてない。

その時、林君の顔が頭から出てきた。

(な、なんで林君が!?)

…気にはなるけど、これが好きかどうかは分からない。

そして、私は頭の中から林君の存在を消した。

「美桜はいるの…?」

こんなかわいくて美人な美桜が恋を知らないはずなんてない。

「私?…うん、いるよ。」

そう言って、美桜は恥ずかしそうに下を向いた。

(かわいい…。)

それは私が初めて見た表情だった。

「そっか。」

でもその時と同時に私の中でショックが生まれた。

「…私ね。林君が好きなの。」

(…え?)

「私ね、林君と中学一緒だったんだけどね…。
クラス違くて…。
結局、何も出来なくて…。
でも奇跡的にここの高校って分かって…。
だから…。今度こそ頑張りたいんだ。」

そう言って美桜は私に微笑んだ。

頑張って欲しいと思ったぶん、反対にショックも大きかった。