「なんかね、洸は男子なんだなあって、当たり前だけど自覚したっていうか」


「うん」


「なんか今まで私、洸だけじゃなくていろんな男子の前で女子らしからぬ行動をしてたなって思い直してですね…」


「うん、こっちがひやひやしてた」


あ、洸が笑った。


って私重症…


「だから、なんか変な意識しちゃって…ごめんなさい、嫌いになった?」


洸が、こちらに歩いてくるのが気配で伝わる。


心臓がドキドキする音が、この静かな部屋に響いてる気がして、怖い。


そっと、左手が包まれる。


ゴツゴツした手。…洸の手だ。


「嫌いになんて、ならないよ」


洸が、近くにいる。それが嬉しいし、これからもそうでありたい。


「…東京、行かないで」


手をぎゅっと握り返す。自分の声が予想以上に震えていて、驚く。


「…行かない。葵が言うなら、行かないよ」


私は、息を呑む。


今のは、幻聴かもしれない。夢かもしれない。


でも、洸はここにいるし、私の耳元で聞こえたのは、洸の声だ。