「ずっと、先輩のことが好きでした」


教室へ向かう廊下の曲がり角を曲がろうとして、私はおもわず足を止めた。


女の子の、震える声。


そっと顔だけのぞかせると、そこには高1の女子と、洸が立っていた。


洸はこちらに背を向けているので、表情はわからない。


「ありがとう。でも、ごめん。俺は…」


「いいんです、分かってました。でも、先輩が卒業する前に気持ちを伝えたくて。言えて、よかったです」


「…そっか」


女の子は今にも泣き出しそうな、それでいて清々しい表情をしていた。


洸は彼女を作ったことがない。


それは、東京に行くからなのだろうか。