「あれ、葵全然進んでないじゃん」
「…え?」
お昼を食べて、再開してまだ30分しか経っていない。
「午前中も何にも聞いてこないから順調なのかと思ったけど、昼も変だったし…」
洸の顔が、真っ直ぐ見れない。
この町は狭い。噂は、すぐに広まる。
私だけ、知らなかった?他のみんなはもう知ってて…
知ってて、なにも言わないの?
「…葵?どうかした?どっか痛い?」
私は無言で首を力なく横に振る。
「朝トイレ行った時、戻ってくるのが遅かったから変だと思ってた。…誰かになんか言われた?後輩に、俺のことで…」
「違う!」
私は、泣きそうになる。
なんでかは分からない。どうして自分がこんなになっているのか。
洸は、勘が良いし、頭も切れる。昔は神童って言われて近所の大人からちやほやされて、でもそれ以上に優しかった。
洸は変わらない。昔から、ずっと、ずっと。
でも、そう思ってたのは、私だけだったのかな。


