「…葵は、すごいな」 洸はいつもみたいに、笑った。 「洸は、この町が嫌い?」 少しだけ、怖くなって聞く。 「嫌いじゃないよ」 「じゃあ、好き?」 縋るような自分の声に、不安になる。 洸は、何も言わなかった。 私は怖くなって、洸のシャツを掴んだ。 予感がした。 洸が、どこかに行ってしまうんじゃないかって。 私の知らないところに行ってしまうんじゃないかって。