「ね、提案があるんだけど」 ふいに掛貝さんは口の回りの赤い汚れをナプキンで拭いながら私に綻んだ表情を向けた。どこか安心する笑みを作れる人だなあ。 「何でしょう?」 私はデュエットでもしようか、とか、彼のそんな軽い誘いを予想していた。あまり唄を歌ったことはないけれど、でも、こういった乗りというか、流れは断らないようにしよう。 「ここでは、というか、俺と柳楽さんの会話、本音で行こうよ」 「本音?」