「ところで……お互い名前を知らないでこんな密室に二人きりになったんだね。何で初対面なのにこんなオープンな感覚でここまで接していたんだろ?」 「言われてみれば……そうね、不思議」 「よくやる?」 「ないない、初めてよ、こんなこと」 恋人同士なら寄り添うように接近するのだろうけれど、私と彼は一人分の隙間を作り並んで座っていた。 「俺は掛貝暁ってんだ。壁とかに掛けたホタテとかの貝にあかつきって書いてさとる、って呼びます」