高校生のときに進学塾の講師と付き合ったときも、レコード会社の販促のバイトで知り合った洋楽担当の社員と付き合ったときも、そんなことはなかった。
互いの危うさ混じりの恋愛に溺れていたのがいつの間にか泳ぎ馴れて、冷めて、気付いたらフェードアウトして浜にいた、というのが常だった。
それが、流川さんに限り、私が、恐らく私だけが溺れていたのだろう。流川さんはきっと最初から冷静だったのかも知れない。
「ね、カラオケ、行かない?」
やはりまだ聞き慣れないその声で我に帰った。
街灯がまだ主張せず明かりを灯している。夜と呼ぶ時に入ったとはいえ、まだ周りは明るかった。

