Side 雛華


手を繋ぎ、時々隣の彼女を見てズキリと胸が痛む。


言うべきタイミングであった気がして、今ならまだ戻れる範囲だったというのに・・・。


喉元まで込み上げていた言葉を飲み込んだ。


その裏に浮かんだのはこの数時間で繰り返した彼女との抱擁や言葉。


そして向けられた笑み。


変だな。


今までと一緒。


妹にしてきた物と何も変わらないのに、彼女にそれをする度にどこか胸が疼いて後を引く。


一度触れたらまた触れたくて、抱きしめたらそれより強い力で抱きしめたくなる。


柔らかくて細くて可愛くて。


この感覚は妹でも感じていたのにどこか違って。


そんな思いで腕に閉じ込めた姿を見降ろせば、何でか指先でなく唇でその肌に触れたくなった。


それは・・・初めての感覚。


妹には抱かなかった物。


芹ちゃんは・・・・、



可愛い。



うん、



普通に可愛い子だと思っていた最初から。


それでもその最初の可愛いからどうも少しずつ形が変わってきていて。


何だろう・・・。


傍にいたくて、


隣にいたら触りたくて、


触っていないといなくなりそうで、


そうして触れたら・・・・




手放したくない。





そんな理解不能な感情の浮上。



自分が今まで生きてきた中で感じた事のないそれに酷く困惑するのに嫌じゃない動悸に胸が熱くなる。


目の前の彼女を知りたくて、全て把握したくて出来得る限りの接触をして。


抱きしめても足りないそれにもどかしささえ感じ始めた時に響く彼女の声。



「興味深いなぁ・・・・」



鳥肌が立った。


俺と同じそれかは知らない。


彼女の本心は分からない。


それでも彼女は俺と言う人間に興味を抱いた。


俺と同じ様に抱いた探求心。


ざわめく胸の内は全て歓喜、いや、僅かに困惑も混じる。


それでも言われたそれを取り下げられたらいけないと焦燥感も働き、逃がさないように彼女を追い詰め諭しその言葉を引きだした。



「・・・・・誘拐・・してみていいですよね?」



その瞬間に、


今までのそれなんてちっぽけな物だったと感じる程の感無量。


同時に逃がさない。


逃がしたくないと思う猟奇的な感情に困惑。