「俺を見て、探って、・・・理解して」
「雛華・・さん?」
「もしかしたら・・・・俺でさえ知らない俺を芹ちゃんが見つけ出すかも。そんなのワクワクしない?」
ああ、雛華さんのグリーンが好奇心に満ちてキラキラと光る。
この眼は探求心が働く時ほどその輝きを増して綺麗に見せるんだと一つ分かった。
ほら、もうこれで一つ探求心による雛華さんの結論。
同調するまで離さないというように私の体を拘束する力は決して強引でもないのに逃げ出すことが出来ず、引き込まれるようにその眼だけを見つめて不動になった。
それでも、心臓ばかりは素直に動く。
早くなったからといって決してこの抱擁に対してじゃない。
この至近距離の動悸ではない。
これは多分・・・・。
「少し・・・・・ワクワクします」
ようやく自分の声を響かせ、動悸の答えを自分で理解する。
うん、この動悸は好奇心とそれを働かせた事により得た答えへの歓喜。
私の答えを聞いた雛華さんが悪戯に、それでも満足そうに口元の弧を強め。
「よく理解したね」と称賛でもするかのように頬を撫でる。
この人は・・・本当に分からない。
子供の様に無邪気。
なのに持ちえた知識や持論を語る時には酷く大人で私を言い負かす。
頼りなさげに見えるというのに、こうして行動するときはどこか強引で言う事全てが正論に聞こえそれに従いたくなるから困ってしまう。
なんて・・・興味深い。
強引な【魅力】という名の引力。
抗うのも相当難しく、弱っている私にある選択肢は素直に引き寄せられて傍にいる事だけかもしれない。
そう判断がジワリと浮かぶと私の頬に触れていた雛華さんの手に自分の指先を這わせて見つめた。
一瞬自分の手に絡んだ熱に視線を動かすもすぐに私の目を見つめその意味を求める視線に軽く口の端をあげる。
そう、今の私には何も残っていないに等しい。
仕事もお金も恋人も、両親でさえも一瞬にして消えた私にすばやく入りこんだのは探求心。
無気力になった自分を動かす原動力が目の前のこの人だというのなら離れられないじゃない。
せめて、他の気力が再活動し始めるまでは。



