あっ・・・眼が変わった。
そう感じた。
ずっと見つめていたから分かるその変化に、ようやくその目でなく表情も捉えればクッと口の端も僅かに上がった。
そうして浮かびあがるのは悪戯でどこか妖艶な表情の姿。
それでも無邪気さを孕んだそれは悪魔とは言い切れない。
だからどうしても【小】がつくそれなのだ。
その小悪魔が今までの驚きを消化して、完全に動揺を消すと私の頬に指先を走らせた。
そうして滑り下りる指先の感触を感じた直後に、顎に絡んだそれがすでに見上げている私の顔を固定した。
でも・・・逃げる気もないのに。
「・・・・・探求して」
「・・・えっ?」
ふわり、何とも言えない加減で私の耳に入りこんだ言葉に反応を返すと、腰に回っていた雛華さんの腕が更に私を引き寄せて存在をお互いに確認した。
「いいじゃない。誘拐した理由ができた」
「り・ゆう?」
「うん。誘拐して・・・、芹ちゃんは俺を探求すればいい」
「・・・私・・・が?」
さすがに驚きが僅かに混じった感情。
その瞬間に子供に引き戻されていた心の内に乱れが生じて大人の自分の再浮上。
そうそう雛華さんの様に常にその感情を保てるわけでない所はきっと今までの【普通】の生き方のなせる技で。
それが復活してしまえば再び突拍子もない人だと彼を見つめてしまう。
そうして気がつくさっきの顔の固定。
これは私が冷静になった時への保険だったのか。
言ったことから逃げ出さないための。
確かに働いた探求心をごまかせない為の。
「丁度いいと思わない?俺の探求心に付き合う中で芹ちゃんの探求心が俺に働いて・・・」
「っ・・・で、でも、別に具体的に何かを追求したいわけでは、」
「それでも・・・・、俺に興味が湧いたんでしょ?」
それは・・・・確かに偽れないです。
恋愛感情とかは知らない。
寧ろ、今は関与したくないそれ。
それを抜きにして私は雛華さんに興味が湧いて。
不思議な方法で癒やしてくるその存在に確かに働いたそれは小さくても探求心だ。
私は・・・、この癒やしの存在に探求心が働いた。
それが、事実。
感情のままの本音。



