【可愛い】は先に許可が下りていたせいもあって今度は躊躇いもなくさらりと零れて。
感情素直に何も考える事なく笑ってしまえば久しぶりに感じる解放感。
ああ、そうだ。
子供の時みたいだ。
何も考えず感情のままに言葉を口にして笑って。
大人になるにつれて色々思案しながら物事を口にし半減した笑いを響かせる。
それがいつの間にか当たり前の感情表現だったのに、
何も考えずに素直に笑うってこんなに気持ちが軽くなるんだな。
でも、コレが出来たのは・・・・。
対峙した雛華さんがそういう人だからなんだ。
気持ちの軽減。
余計な感情を取り除き子供の様にそのままの感情をぶつけてもいい人。
ああ、だから・・・
余計な力や考えを抱かなくていいから私はきっと癒やされるんだ。
この抱擁もぬくもりもやましい意味はなくて、言葉も行動も純粋な子供の欲求。
酷く・・・
楽で気持ちがいい。
「雛華さんこそ・・・探求心を働かせるに値する人ですよ」
そう言って微笑んだのも素直な行動。
彼がそうだというのなら、私の行動にも変に意識して過剰な含みを抱かないというのなら。
素直に・・・思ったまま触れてもいいですよね?
僅かに驚き孕んだグリーンアイを覗き込むように見上げると、綺麗で滑らかな肌の頬に指先を這わせてみる。
そう、そうしてみたかったから。
働いた感情に素直に従っただけの行動。
そのまま指先を滑らし綺麗で作り物の様なその目に触れたいと思い目元ギリギリまで近づけてみる。
「本当に・・綺麗」
「芹・・ちゃん?」
「・・・雛華さんみたいな人がいるんですね」
確かめるようにその顔に触れて声を響かせる。
引き込まれる様なグリーンアイを意識もせずただまっすぐ見つめ、頭の中からはもうこの人が男の人だとか色恋とか余計な感情は不在。
そうしてただ一つ浮かんだ言葉が口から零れる。
「興味深いなぁ、」
ポツリと小さく消え入りそうな程の自分の言葉。
あまりに自然に考えも無しに呟いたから言った直後から言った事を忘れそうなそれ。
なのに、
元来それを持ち合わせている目の前の男が聞き漏らす筈もない。



