THE FOOL





うっかり当然の様に雛華さんが歩きだすのを待ってしまった。


自分の手を引いてどこに連れていくのかと僅かにその空気に酔って。


だけど考えてみたらこの土地に引き連れてきたのは私で、当然地理に詳しいのも私なんだ。



「す、すみませ・・・」


「うん、ごめんね。俺全然この辺知らないし」


「ああ、もう、私本当に馬鹿・・・」



言いながら自分の頬を両手で覆って自分の間抜けさに打ちのめされながら必死で記憶を走らせる。


えっと、確か徒歩圏内にコンビニがあった筈。


どこか曖昧な記憶を明確にしようと躍起になり、それでも記憶する方向を頼りに体を捻って歩き出した。



「あの、こっち・・・」



歩み始めると同時に進行方向を指さし雛華さんに促すように振り返った瞬間。


グッと軽い力に引きとめられ、結果一歩しか踏み出す事なく体は不動になった。


小さく驚き、私を引きとめた姿を確認するように見つめ。


いや、元々振り返っていたのだからそのままの延長で雛華さんを見つめ。


再度指先に絡んできた指先の理由を無言に求める。


そうしてその表情は不機嫌ではないにしろ確実に不満の孕んだそれであると判断する。



「あ・・の?」


「ねぇ、芹ちゃん」


「・・・・はい」


「この趣旨忘れてる?」


「・・・はい?」



とても間の抜けた声を響かせたと思う。


だって雛華さんの口にした言葉の意図とする物が上手く掴めなくて。


趣旨と言われるであろう物が何なのかも理解できずに眉尻を下げる。


傍から見たら2人して複雑な表情で固まる不思議なカップル何だろうか。


生憎なのか都合がいいのか、今その通りにあるのは私達2人だけの姿で。


変な目で見られる心配がないからなのか動き出す事も忘れ固まってしまった。


私が本気で理解していない事に気がついたらしい雛華さんが更に不満げに口をへの字に結ぶのに申し訳なくなって更に眉尻を下げれば。


私を引き止めるために繋がっていた手がグイッと力を絡めて体を引き寄せる。


何の準備も構えもしていなかった体が驚く間もなく雛華さんにぶつかって。


状況を把握するより早く私の体に巻きついてきた腕。