シンッと静まった空間に相変わらずキシキシとなる音が耳に入りこむのにさっきほどの恐怖心はもう湧かない。
今私の心を占めるのは・・・。
「・・・・それは、俺に対しての探求心だね」
響いた声音。
低く男らしいその声と口調で、目の前の雛華さんはきっと悪戯な小悪魔の表情なのだと予想した。
多分それは間違っていない。
そして指摘されたそれに気づかされ、確かにそれは探求心だと理解した。
「は・・い、・・・多分、それです」
「ふふっ、嬉しいな。自分がそれを働かせても自分がその対象になる事なんて滅多にないからさ」
そう言ってクスクスと笑う声を響かせた雛華さんが絡んでいた手に僅かに力を入れてしっかり握る。
より強まった雛華さんの熱。
ああ、よかった。
暗闇のおかげで明るい時よりも平常心でいられる。
「俺が・・・・女の子をどう見てるか・・・ね」
含みある響きに僅かに心臓が乱れたリズムを刻んで落ち着いた。
うん、平常心。
「・・・可愛いよ」
「・・・・・」
「うん、自分と・・男と違って小さくて柔らかくて温かくて。常にギュッと抱きしめていたいような?」
「・・・・・なんか、そんな対象が傍にいる様な口調ですね」
「ん?ああ・・・うん、そうだね。いるよ」
あれ?
えっ?
いちゃうの?
衝撃的な事実をさらっと告げた雛華さんはどんな顔をしているんだろう。
でも、それよりも気になるその対象の事実。
えっ?だって色恋に興味ないって言っていたのに。
そんな抱きしめたりしたい存在って恋人以外に当てはまるのかな?
そこについて追及したいと思うのに一歩踏み込めばプライバシーの範囲だと、上げた言葉の足をそのままに不動になってしまえば、
「でもねぇ、最近はそれ不足」
「・・・はい?」
「いや、親兄弟に禁止されちゃった」
「・・・・・何を?」
「ん?抱擁?」
「・・・・・・・」
ダメだ。
理解できない。
親兄弟が反対するそれって何だろう?
弾きだされる言葉が上手く【恋人】に繋がらないそれに首を捻って下を向く。
もしかしたらロミジュリ的な関係なんだろうかと、あり得なくもない関係を想像していれば。



