THE FOOL




さらりと言われる極上の口説き文句にときめきたい心臓がフル可動しようと意気込んでいるのに、歯止めをかける事実がその動きを鈍らせて。


だって、だってですよ。


今までの流れですよ。


雛華さんのこれは絶対に色恋孕んだセリフではない。


そう頭に叩きだすと準備運動ほどに軽いフットワークをきかせていた心臓を宥めてゆっくりと息を吐く。


そう、全ては探求心交じりの子供の言動や行動。


この場合の好きは幼稚園児の「○○ちゃん好き~」に値するもの。


そう意識して再度雛華さんを見上げれば。



「・・・あ、」



思わず声を零したのは、さっきはギリギリ紅い光りが射し込んでいたのにどうやら没した太陽のせいでグンと暗くなったそこでは表情が見えにくくなっていたから。



「く、暗いですね」


「ん?ああ、本当だ」



あ、あっさりと話題がそれた。


思ったままに感じた事を口にすれば、その言葉に意識が移り確認するように視線を走らせた雛華さんが同調の言葉を落とす。


掴みどころのなかった空気がその効果でスッと消えどこか安堵し直後に怯える。


そう暗い。


そこで最初の問題に戻り、タイミングよくギシリと家が軋んだ瞬間に静かに雛華さんとの距離を縮めた。


そう、僅かに。


雛華さんが他に意識を移している間に気づくか気づかないほどの距離。


少しでも気配強まる場所で不安を緩和させたかったんだ。


畳についている両手が寂しくて不安で。


なにか安堵する物に触れていたいと軽く震え。


そうしてすぐ届く距離に同じように畳みについている雛華さんの手に意識が移る。


さすがに・・・抵抗がある。


もう何度も上回る接触を重ねたけれどこの暗闇でいかにもな感じに手に触れたらあざとい女の子のようで。


そんな意識ではないにしても傍から見たらそんな風に見えてしまうんじゃないのかな?


でも・・・誰が見てる?


誰が見ているわけでもないのにそんな意識がが働いて。


小さなプライドと恐怖心とのサンドイッチ。


そうこうしている間にも暗さがどんどん増していき、いよいよプライドを打ち砕こうかと思ったタイミングに絡む熱。


それと・・・、金属的な。