THE FOOL




「よくわからないけど・・・・悪意はないんだよね?」


「あっ・・はい、勿論」


「つまりは・・・・褒められたって事?」




悪意なんてある筈がない。


雛華さんの行動に困惑はすれど怒ったり悲しんだりする感情は皆無で。


寧ろ経験した筈の辛い現実を掻き消すような強烈さに感謝さえしてしまいそうだ。


しいて言えば・・・今の私を癒やす存在。



「癒やされるなぁって・・・・そんな含みの可愛いだと思って下さい」



そう告げれば、自分の口の端が上がっている事に気がつく。


つまり自分は心からそう感じているのだと口にして再度の自覚。


おかしな話。


本来なら類似する姿が癒やしなど与える筈ないのに、顔の類似など忘れさせるほど雛華さんは個性的な人なんだ。


納得してその事に安堵した。


その瞬間・・・・、


スッと伸びて私の頬に触れる指先に驚き事もなく視線を雛華さんと絡めて見つめた。


そして高鳴る心臓は正常な反応。


だって、私の頬に触れてこちらをまっすぐに見つめている彼といえば、その嬉しさを我慢できないと溢れたような笑みで私を見つめていたから。



「うん・・・いいや」


「えっ?」


「可愛いって言っていいよ」


「雛華・・さん?」



戸惑いながらその名前を呼べば、ニッとほとんど眼を閉じて笑う姿に再び「可愛い」と言いたくなる。


ああ、今まさに言っていいと言われていたっけ。


でも・・・、


何で?




「それが芹ちゃんの俺への称賛なら・・・・、すっごく嬉しい」


「・・・っ・・・」


「ね、だから・・・、いつでも言って。・・・いっぱい、芹ちゃんの声で言われたい」



頬にあった指先が言葉の通りにそれを引きだすように唇に触れてくる。


指先の熱が唇に広がって、私の目を見つめるグリーンが何かを懇願する。



「雛華さ・・・」


「俺、・・・芹ちゃんの声が好き。だから芹ちゃんに褒められると気持ちいい」




ああ、これは・・・・、


何なんですか?


これも何かの探求心なんでしょうか?