THE FOOL





熱を持った頬が空気に触れたのは一瞬。


すぐに与えられた感触に驚いた直後には熱が上がる。


フッと頬に触れてきた雛華さんの唇が軽くわたしの頬の感触を確かめるように啄むと更に探求心が働いたのか甘噛みしてきたのだ。


頬に決して痛くない硬い歯の感触と熱い息。


私の頭をパニックに導くのにはいとも容易いこの行為。


こ、これは・・本当に探求心でしょうか?


ギリギリのラインだと無理矢理思いこませるその行為は一歩間違えれば男女の扇情的なそれに含まれそうで。


一回で留まらないそれが唇が頬を掠めながら場所を変え、そしてそこにまた同じ様な刺激を与えにくるから堪らない。


あ・・つい。


心臓が苦しい。



「・・・・ふっ・・・・興味深いね」



小さな笑い声の後に囁くように響く雛華さんの声、あまりの至近距離で死角のそれは表情は見えないけれど多分・・・あの笑み。


悪戯な、悪魔の様なあの笑み。


何に対しての興味なのか、


熱に浮かされそうな頭でその答えに疑問を感じていればそれはあっさり本人が口にする。



「・・・柔らかい。・・・本当・・・どこまでこんなに柔らかいのかな?」



雛華さんの指先が私の髪の毛を指先に絡めると後ろに流し、そうして露わになった耳にじりじりと唇を近づけていき耳元で一度強く唇を押しあてる。


そ、そこはもう・・・・柔らかくは・・・・ないですよ?


思わずそう言いたい言葉を飲み込んでしまったのは、


とうとうその感触を自分の耳朶に与えられたから。


ゾクリと鳥肌が立ちかかる息に心臓が爆発寸前になる。


そうして思わず自分の口を手で覆ったのは一瞬でも気を抜けば変に扇情的な声をあげてしまいそうだと気がついたから。


雛華さん、雛華さん、これは・・・本当に探求心でしょうか?


どういった探求心なんでしょうか?


バクバクと煩い心音が頭にまで反響して、今にも泣き出しそうな顔はきっと紅い。


さっきから必死で保っている足もいつ崩れるか分からなくて。


気がつけばしっかりと雛華さんの服を握っている自分。


これは・・・・傍から見れば


恋人同士のそれに類似する。




探求心って・・・・なんだ?