「お、美味しそうですか?」
「うん、」
再度確認してみれば今度は動作と声の二重奏。
そうしてここに来てようやくその気まずさが薄れたのか、自分が感じたそれを確かめる様に雛華さんの指先が私の頬に触れてくる。
感触を確かめるように指先の力を入れたり抜いたり。
色々な角度から確認し始めるグリーンアイはどこか恍惚としている。
ああ、これは・・・・
覚醒モード・・・。
「だって、芹ちゃんってば本当に白くて細いのにその肌もちもちだよね?!何で何で?なのに触るとサラッとしてて・・・」
言いながらどんどん近付く美麗な顔。
興奮した彼はこの近距離に気づいていないのだろうか?と、こっちばかりが正常な男女間の距離を頭に描いて困惑する。
雛華さん、普通恋人でない男女がここまで近距離で顔を近づけることはないんですよ。
そう言えたらどんだけ楽で心臓が休まるだろうか。
それでも私が逆らえる立場である筈もなく。
多大な借金を肩代わりしてもらったという足かせで、必死にその動悸に耐え至近距離でその鼻血ものの美顔を捉えた。
「本当・・・どこ触ってもふにふに~。こんなに細いのになぁ」
そう告げて、確かめるためなのか躊躇いもなく私の体を抱きしめて細さを口にする。
も、もう、何度目の接触?
密着する体に緊張して、こうされて理解する雛華さんの事にこっちは酷く困惑するのに。
そう、触れてみれば嫌でも理解する男の人の体の感触。
根本的に女の人とは違う薄い体に筋肉質な感触。
しっかりと確認出来そうな骨格。
小顔で美麗だろうと体のラインはしっかりと男の人で、その性格がいかに子供の様だといっても彼は成人した男の人なんだ。
そう・・・茜さんと同じ。
それに気がついたら限界点の突破。
一気に駆け上る羞恥心で顔が熱くて、なのにそれを全く理解していない彼の探求心に更に私は沈められる。
フッと雛華さんの肩に埋まっていた自分の顔がようやくまともな空気を感じ、やっと溜まりに溜まった熱を逃せると思い安堵した。
のに、
「・・っ・・・・」
私はいつから食べ物になったんでしょうか?



