THE FOOL





似ている?


本当に?


そんな自問自答。


一瞬その思考に意識が移って、でもすぐに雛華さんに引き戻されることになった。



「何で、傍にいたいか・・・、なんで、触りたいか知りたいんだ・・・」


「・・っ・・それが・・・雛華さんの探求心。・・・・私が協力すべき事なんでしょうか?」



喉が焼けそうに熱いのを感じながらなんとか言葉を弾きだす。


そう、この誘拐の条件だったそれ。


その事を思い出し確認するように雛華さんに口にすれば、少し驚いた後に小さく笑って「そうだった」と呟いた。


その意図は分からず疑問を浮かべればまた見つめ返される眼。


まるで私に暗示でもしかけている様なそれに恐怖も感じるのに快感にも感じる。


麻薬の様だ。


麻薬なんてした事もないけれど・・・・。


人を惑わすグリーンアイ。


でも私はこの色が酷く好き。


そう思って頬にあった指先を僅かに目元にずらし触れた瞬間。




「・・・抱きしめていい?」




言われた言葉に驚愕し羞恥を感じる間もなくすぐに付け加えられた言葉。



「ってか、これは拒否権の無い脅迫」



と、自分が誘拐犯だと示す様な言葉を私に押し付けると流れる様な動きで私をその胸に抱きしめた。


ああ、これも・・・デジャブ。


ついさっきも経験したもの。


なのに・・・、心臓が酷く暴れて体が熱くなるのは何故だろう。


ああ・・・、


そうだった、


脳が、体が誤作動を起こしていたんだ。


抗っても無駄だというように押し付けられた抱擁に抵抗もせず受け入れ目蓋を閉じた。


だけど瞬時に開いて光りを通したのは・・・、


目を閉じれば思いだしてしまうから。


それこそ誤作動で、つい数時間前まで好きだった人を。


今もまだ好きな人を。


しばらくその身を預けお互いの呼吸と熱だけを感じて不動になる。


目を開けていれば間違える事なく理解する雛華さんの存在にようやく胸の高鳴りが治まり始め。


これは探求心の実証なのだと頭が理解し始めた。


筈が・・・、与えられた感触に再び動悸の再発。


不動だった雛華さんが僅かに動きを見せ、それに気がついた直後に首筋に触れた唇。


不意に掠めただけなのかと思いきやしっかり密着するそれに見事心臓が跳ねあがった。