思わず不動で全ての余計な感情を忘れ見つめていれば、再び止まっていた時を動かしたのも彼の声。
「・・・・芹ちゃんの第一印象はね、いるかいないか分からない女の子だったんだ」
「な、なんですかそれ」
「うん・・・、一瞬だったし、俺の空想だったのかなって」
確かに、あの時の雛華さんは本の世界に夢中だったと硝子にぶち当たった記憶で納得する。
しかもサングラス越しの景色じゃ余計にそう感じるのかもしれない。
自分なりの解釈も交えてそれに思考を巡らせていれば更に続けられる彼の私の印象。
「で、次はほら・・・茜ちゃんに紹介されて」
少し・・・言葉を濁した雛華さんに苦笑いで頷いて見せる。
多分私を気づかってのそれに気にするなと促し会話の継続。
「あの時・・・・芹ちゃんが俺の眼を綺麗って言ってくれたのが頭に反響してさ。それで驚いて顔をあげれば空想かと思ってた女の子で、やっとあの時・・・芹ちゃんの存在を記憶出来たんだ」
ドキリとした。
私の手に重なっている指先が私の手をしっかりと包み、もう片方の手さえも私に伸びて柔らかく髪を撫でたから。
何とも言えないシチュエーションに困り思わず視線を落とせばすぐに響く牽制の声。
「そらさないで・・・・」
「・・・・っ・・はい」
すかさず促されたそれに心臓が早まるのを感じながら顔をあげてまっすぐに見つめる。
そうして捉えるのは可愛さも妖艶さも皆無な真面目な表情の雛華さん。
「何でかな?・・・・・誘拐したくなったのは?」
ああ、胸が・・・痛い。
「自分でもまだ分からないんだ。それが知りたくて・・・追求したくて・・・離れたくない」
「・・・・雛華さ・・」
「触れていたい」
頭がクラリと揺れる。
馬鹿みたいだ。
誤作動を起こして勘違いしている頭が。
まるで愛の告白の様に錯覚するそれは雛華さんにとっては探求心を説明してるにすぎないのに。
誤認した心臓が馬鹿みたいに反応している。
それもこれも・・・・、
目の前のこの人が綺麗すぎるのがいけないんだ。
目の前のこの人が・・・・
似ているから・・・・。



