「えっ、いや、・・」
「ごめん、俺・・・そんなつもりじゃ・・・」
「ちょっ・・・ちが、大丈夫!大丈夫ですからっ!」
「ごめん・・・怒らないで・・・」
そう口にし、私に絡めていた指先に力を込めて小さく懇願する様な雛華さんに心臓が強く跳ねる。
本気で怯えるように視線を落とし、絡まなくなったグリーンに今度は自分が怯えそうで。
思わず絡まっている指先を解いてその両手で雛華さんの頬を包むと顔を上にあげてしまった。
瞬時に絡んだのは驚きに満ちたグリーン。
その驚きは自分にも伝染ししばらく2人で固まってしまう。
ああ、どうしよう。
なんだか説明のつかない自分の突飛な行動に変な汗が込み上げてきそうなのをヒシヒシと感じ。
呼吸のしづらさに自分がいつの間にか息を止めていたと分かりゆっくり吐き出した。
その瞬間に代わりに入りこんだのは。
「・・・・・・一緒だ」
驚き孕んだ声を響かせたのは雛華さんで。
その言葉がどこにかかるものか疑問を感じて見つめ返せばそっと指先に重なってくる雛華さんの指先。
ああ、そうだ、まだ私は彼の頬に触れていたと思いだし、羞恥に染まりそうな時に再度付け加えられる雛華さんの言葉。
「初めて芹ちゃんと目が合った時と一緒」
「えっ?」
「ほら・・・・会議室で」
そう言われ、あまり多くない雛華さんとの記憶を回想すればそれはいともあっさり思い出されて撃沈した。
「あああああ、も、申し訳ありませんでした。あの時の失礼な行動と言ったら・・・」
「ビックリしたんだ。いきなり本の世界から現実に切り替えられて。目の前にいる女の子が現実か空想か分からなくて」
そう言って確かめるように私の手にしっかりと自分のそれを重ねる雛華さんが目蓋を降ろす。
長い睫毛だな。と感想が浮かび、すぐにその美しさに見惚れてしまった。
空想か。
それは私からすれば雛華さんの方がそれの様だと思ってしまう。
現実離れしてて、言動行動が不思議で、その行動が本能に忠実すぎて・・・・。
まるで何かの本の中から出てきた人みたいだ。



