THE FOOL






言われた言葉がまるで自分の抱いたものだと感じ。


そしてすぐに羞恥に染まった。


そう、自分の気持ちだっとしても今それを告げたのは雛華さんで、告げられたそれは雛華さんの感情なのだ。


困ったと思い視線を落とす。


だって自分のその不可思議な感情でさえ厄介なのに更に雛華さんの感情まで上乗せされたら頭が混乱する。


私が雛華さんに安心するのはどこか癒やしを与えてくるあのグリーンアイの効果な気がする。


それを確かめるように再度おずおずと顔を上げゆっくりそのグリーンアイと対峙すれば、柔らかく微笑む姿が弧を描いていた口から言葉を弾くのだ。




「芹ちゃんに触ってるとね、安心するんだ。・・・何でかわからなくて、その【何で?】に興味が湧いて・・・、もっと追究したくてずっと触っていたいのに芹ちゃん逃げるから・・・」


「・・・・あっ」




思わず納得したように声を響かせたのは本当に納得したから。


と、言うか合点がいった。




「もしかして・・・、さっきから度々ムッとしてたのって・・・・、それが原因ですか?」



そう確認すれば思い出すように表情を歪め考え込んだ彼の口からはっきりしない返事が響き始める。




「・・・・俺、ムッとしてた?」


「・・・はい、かなり不機嫌でした」


「いつ?」


「えっと・・・・、玄関で・・・繋いでいた手を振りほどいた時と、さっき抱きしめられたのを押し返した時です」




言って、なんだか自意識過剰な気がして落ち着かない。


確信を持ってそれだろと言っているようで、まるで私に拒まれた事にショックだったんだろ?と問い詰める様なそれに耐えきれず心で悶絶する。


ごめんなさい。


身の程知らずです。


ごめんなさい、


ごめんなさい、



「ごめんね・・・・」



響き返された言葉に冷静になって言った本人を見つめれば、申し訳なさそうに眉尻を下げ私を見つめる姿に戸惑う。


謝られ、何の話だったか一瞬考え込む程の衝撃に、思い出してみれば彼の不機嫌についての会話だったと今更な記憶。


つまりは自分の不機嫌だった態度に対しての謝罪だと理解すると慌ててそれに反応を返した。