それゆえに今の自分が出来る反応はただ一つ。




「せ、茜さんを・・・可愛いと思ってました」




素直な自己申告。


だって、黙ってて苛められるよりはましな苛めに収まりそうだ。


私の言葉に一瞬きょとんとしてからにっこりと口の端をあげた茜さんが、グッと顔を近づけたかと思えば躊躇いもなく首筋に噛みついてくる。


決して本気ではないそれは身を捩るほどくすぐったくて、それでも押さえこまれるとチクリとその箇所に痛みが走った。


次いで耳に響く甘く危険な声音。



「可愛いのは芹ちゃんだよ」


「め、滅相もありません。茜さんの足元にも及ばないというか・・・」



謙遜でなく本気でそう言い返せばすかさずその唇を塞がれた。


絡みつくキスの巧みな事・・・。


キス一つで意識を奪いそうな茜さんは経験豊かなんだろうな。と、こんな時に思ってしまう。


いや、こんな時だから?


息も絶え絶えに意識を飛ばさないようにキスについていけば、チュッと音を立てて名残惜しそうに離れた唇。


重なっていたという名残まで確かめるように、唇をペロリと舐める仕草まで実に妖艶。


こんな人が、




「芹ちゃん・・・、早く結婚したい」




響いた声にグラリと揺れる。


そう、この時間を築く直前に私に与えられたのは・・・。




『俺と結婚しよ』




まるで遊びに行こう。と誘うかのような軽さで私の左手の薬指にイミテーションだろうか?と疑いたくなるダイヤの指輪をはめた彼。


それがプロポーズと気がついたのは指輪をしっかりはめ込まれた後だった。


混乱し何か口にしようと開いた唇も瞬時に塞がれ、離れたと思ったら先回りの彼の言葉。



『もう、婚約って事だから』



鋭く光ったグリーンアイが逃がすものかと暗に伝える。


その瞬間に無駄な抵抗は意味がないと、微笑み返したのを了承とされたらしい。


そうして押し倒されて今に至るんだ。