秋だからか、夜は肌寒い。

数分すると電車がきた。

ちょっぴり寒くて、椅子が暖かい。

動き出した電車の窓から夜の景色。

この瞬間が結構好き。

「塩対応だ」

人が心を落ち着かせてる所にきた失礼なやつ。

「なによ」

「冷たいな」

「ちょっと何隣に座ってんのよ」

さり気なく隣に座って来た失礼なやつ。

他にも空いてる席はあるのに、わざわざ隣にくる意味あるの?

「別に、何となく」

なに、こいつ。

そこからはお互い話す事もなく、私の家の最寄り駅まで来た。

「降りるからどいて」

「俺も降りる」

「そう、なら早くどいて?」

車両を降りて改札口に向かう。

西口に向かって歩き出し、階段を降りたらいつもの道を通って家に帰る。

いつもならそうなのだけど、今日は違う。

後ろから平然とついてくる失礼なやつ。

「ついてこないでよ」

「女の子1人で夜道は危ないだろ」

偶然同じ電車で

偶然同じ車両で顔を合わせただけ

そして同じ椅子に座った。

ただそれだけなのに、家まで送ってくれようとしてた?

酷い言葉を言った事に少し後悔した。

素直になれずそのまま歩き出す私。

「家ここだから」

「そうか」

「ありがと」

小さい声でお礼を言った。

「来おつけて帰れよ」

「家の中入るだけだし」

「わかんないよ。家の前で転けるかもしれないだろ?」

笑ってしまった。

家に入るだけなのに、そこまで心配してくれる事に。

心配症なのだろうか。

でも、悪い気はしない。むしろ少し嬉しかった。

失礼なやつって思ってた私が失礼だったのかもしれない。

「ありがとう」

今度はちゃんとお礼を言えた。

「おう」

「あなたも来おつけて」

「あなたって何か変な感じだな」

「しょうがないじゃない。」

「俺、黒田翔太」

彼から名前を教えてもらった。

礼儀として、自分の名前をゆうのも当然の事。

「私は、白井葵」

「よろしく」

偶然が重なって名前を教えてもらっただけ。

よろしくの意味が分からない。

友達って事?

「友達って事」

心を読まれた気がした。

同じ事を考えていたから。

「そう」

「相変わらず塩対応だな」

この余計な一言がなければ彼は優しい人なんだと思う。

「早く帰りなさいよ」

「そうだな。じゃまた明日」

「うん」

背中が見えなくなるまで一応見送る。

家に入りお風呂を済まし自分の部屋に戻る。

もう23時になる。

ベットに入って数分した時携帯が震えた。

しおりからのメールだった。

内容はショッピングモールにプレゼントを買いに行きたいらしい。

断る理由もないので行く事にした。

ベットの上でぴょんぴょん飛び跳ねて、明日のショッピングを楽しみにしているしおりが思い浮かぶ。

私も楽しみ。

学校に寝坊しないように今日はもう寝る事にする。