北の妖怪に見合う強さの封印をしたはずだ。

何故だ。
どこで間違えた。

「あーぎ」

......本当に、こうもこうも登場の仕方が同じだと、次の行動が分かる。行動が分かるから、耐性が付く。耐性が付くから、回避が出来る。

ひょい

ほら。
この単純狼男は、挨拶代わりに、と、私に抱き付いてくる。

聖なる神に抱き付こうなど、浅はかだわ。

「亞嶬様、失礼ですが、もしやそちらのお方が亞嶬様の恋人で?」

持っていたみかんを、落としそうになった。

「な訳が」

「そうそう。俺、亞嶬の恋人」

凶悪な動物は、女神の言葉を遮り、事実の欠片も無い嘘を言う。

「あなた...っ!何言って...」

「それはそれは。大変失礼致しました」

申し訳無さそうに頭を下げ、これにて退散しますと残し、部屋を後にした。

そして私は、凶悪で単純な半妖を睨む。

「待って、その顔可愛い。睨んでるつもりなの??理性崩壊寸ぜ」

「女神を弄ぶとは、良い度胸ですね」

目の前にいる不純物に、手をかざす。軽い全身麻痺にしてやろうと思ったのだ。

「ごめんごめん、冗談だって」

笑いながら、手を降ろそうと、私の手に触れる。