流石にその一言で汲んでくれた?
いや、これ以上何を突っ込もうが今は無意味だと諦めたのか。
とりあえず美代の口からその会話が続く様な言葉は発せられず、自分も黙々とやるべき作業に集中していたけれど。
ああ、そろそろ。
そんな事を思ったまさにそのタイミング。
扉を開く際の風の音。
それに反応して『いらっしゃいませ』と声を響かせ振り返れば、捉えるのはいつも通りに見た目がチャラい吐季さんの姿だ。
普通の女の子であるなら咄嗟にレジに立つのを拒んだりするんだろうか?
まさに美代が気を利かして一瞬こちらを見た気がするけれど、それに応えるような事はなくスッとレジに立った自分の体。
だって、……関係ないし。
そもそも、吐季さんとここに立つ自分は元々他人で、店員と客で、これからもずっとそうなのだ。
吐季さんは自分を知らないし、自分も吐季さんはチャラいスーツのお客さんでしかない。
それだけだ。



