「……最後まで、お手伝い出来なくてすみません。でも、新商品出たら買います。……頑張ってください」
「そんな、永遠の別れみたいな」
「お別れですよ。私はもう吐季さんの前に現れません。……ってか、寧ろ元々存在してないんですよ」
「えっ、恐っ、何?幽霊とか言いだしちゃう?やめてよ?おじさんこう見えてホラー苦手だからさ」
「フッ、じゃあ、色々面白いので幽霊って事で」
「巴ちゃ~ん!?」
「も、黙ってください」
これ以上話していたら……また恋心が再燃してしまうかもしれないじゃないですか。
それはお互いに望まぬ事で、それこそ巴ちゃんなんて亡霊を生み出しかねない。
それを十分に吐季さんも理解しているのだ。
だから、『黙って』なんて言葉にスッと口を閉ざし、その代わり表情が応えるのだ。
『ごめん』と。
そんな表情につい離れがたくなった体は正直で、この場を去るには丁度いい瞬間であるのに足が動く事をしてくれない。
立ち上がって何食わぬ感じに去りたいのに。
そんな精一杯の強がりを読んで後押ししてくれた?
「………俺も、頑張ってみるかな。……告白」
「っ……」
ああ、本当…。
最後の最後まで、巴ちゃんを殺してくれる対応でありがとう。
そんな瞬間に金縛りが溶けた。
スッと立ち上がった体は吐季さんに一礼して躊躇いもなく歩きだす。
未練を残すように振り返ることもなく。



