「キスしたいです」
「………………えっ?」
「吐季さんとキスしたいです。してください」
「………えっ……えー……いやいやいや、」
「もうずっと、吐季さんに会う度にそう思ってたんですよ。真正面から顔覗かれる度にキスされたいって」
「ちょっ……巴ちゃん、あの、」
「私じゃそんな気起きませんか?」
「…………」
「好きな相手じゃなきゃダメで…」
「ごめんっ、」
「………」
「………出来ない。巴ちゃんの事も好きなんだけど……キスしたいとか…っ…そんな気は起きないんだよ、ゴメン」
はい。
知ってます。
寧ろ、そんな困ったような笑い方をさせてしまってすみません。
見た目通りのチャラさで噂通りのいい加減な女性関係であったなら、この唇も束の間の至福を感じていた頃だろう。
それでも離れた瞬間からこれ以上ない毒を含み苦痛に苛む物であった筈。
そんな残酷な事をする筈のない吐季さんだと知っているんです。
知っているから、無茶苦茶な煽りで言い攻めて最後の一言を言わせた。
もう間違っても馬鹿な期待を誤作動させないように。
【巴ちゃん】を完全に殺す事を手伝ってもらったのだ。



