自覚よりも失恋が先だとか笑ってしまう。
何がきついって、この吐季さんが1年も片想いしてるとかチャラい印象に似合わない一途な事実に対してだ。
行きずりでポッと出の自分が敵うはずないじゃん。と、泣き落ちる様な乙女心皆無に開き直っているここ最近。
だって、勝ち目無いじゃん。
太刀打ち出来ないじゃん。
どんな愛くるしい相手か知らないけどさ。
……きっと愛くるしいんだよな?
いや、吐季さんが惚れるなら大人綺麗とか?
とにかく羨ましいわその相手。
自分だって吐季さんの一途さ欲しい。
一回でいいから抱きしめてくれないかな?
細身に見えて実は締まってそうなんだよな。
あー……そこまでいったら一回でいいからキスとかもしてみたいわ。
そんな煩悩と強欲さは無表情でも目元に現れていたらしい。
「………巴ちゃん、何を思ってるかはさすがに分からないけど目が恐い」
「すみません。これが自分の平常スタンスです」
「えええ~、獲物を前にした肉食獣みたいな目してたけど?」
はい、吐季さんに食らいつきたいというくらいに飢えてました。
と、言えたらどんなに楽であるのか。
報われないと理解しているのに、それが余計に恋心であったものを性質悪く欲求の塊へと腐敗させている気がする。
失恋したと泣き寝入り出来る女の子であったのならどれだけ可愛げがあったのか。
実際は、手に入らないと分かる程に諦めきれずに欲しているのだ。



