むしろ、扉を開いた時点で捉えた亜豆の姿はバーカウンターで、店員の女性と何か話しながらワイングラスを口に運んでいた最中。
俺の来店のベルに店員と一緒に反応してこちらを向いた姿が、特別笑みも見せずに片手をあげるなんてドライさには失笑。
そんな姿に近づいて行き亜豆の隣に並べば飲みかけのテイスティング中のワインを差し出してくる。
「なかなかコレ美味しいです」
「白か」
「赤がお好きですか?」
「いや、どっちも好き」
そんな他愛のない会話をしながら受け取ったグラスのワインを口に運んで、広がる風味に疲れも癒され息を吐く。
「美味い。・・・けど・・コレいくら?」
「8000円ほどだったかと。折半だしクリスマスだし、それでもさすがに一本ウン十万のワイン買うほど飛ぶ気はなかったので、予算的には5000~1万くらいかなと」
「成程ね。確かにウン十万のワインなんて逆に高級すぎて味分かんねぇかもしれねぇ」
「いいんですよ。庶民は庶民の感覚で高級と思えるものを楽しめれば」
「さすが、コンビニケーキで無邪気に喜んでたお嬢さん。安上がり」
「それ言ったらもっと安価なワインでもいいんですよ。私の目的はワインをつまみに伊万里さんと過ごす事なだけなんですから」
「っ・・・・」
ほらほらほら・・・これだよ。
これなんだよ。
サラッとさ、こっちの欲を煽っちゃう亜豆節。



