「見切りを付けろって・・・なんか中途半端に優しいんですよ」
「・・・えっ、」
「本当に見切りを付けさせたいならさっきのまま最低発言で最低男の印象のまま終わらせてくれればよかったのに」
「・・・あ・・あー・・・そう・・なのか?」
「あーーー・・・もうっ、本当、伊万里さんは伊万里さんで・・・っ・・・そんな伊万里さんだから『好き』を手放せないじゃないですか」
「っ・・・」
もどかしい。
そんな表情を全面に片手で頭を抱えた小田がドンッとやや強めに俺の胸を叩いてきた事には少し驚いた。
発せられた言葉にも。
『伊万里さんは伊万里さんで』
それは・・・亜豆にも言われた記憶がある。
こんなダメな俺を理解して尚、そんな俺だからいい。
亜豆の発した言葉の意図はそう解釈出来たけれど、小田の場合のそれも同じ介錯なんだろうか?
今もままならない感情に眉根を寄せて、ずっと何かを堪える様な表情に赤味を乗せて。
可愛いし・・・うん、好きだ。
自分から『好き』だと思える珍しい女子。
亜豆も小田も俺の中では特例の存在。
ああ、だからこそ、俺ははっきりと区別をつけておきたいんだ。
亜豆の為にも、小田の為にも、自分の為にも。
『好き』が恋愛として成長するのは一つでいい。
間引きと言ったら聞こえが悪いけれど、大切だからこそ逃げ道の様に期待を持たせていたくない。
でも、それはあくまでも俺だけの意志。



