本当に小田の言う通り。
最近まで名前の呼び方も知らなかった。
なのに、あっという間に自分の意識を引いて、攻め込むわけでもないのに心を占領された。
「ゴメン。・・・でも、今譲れない優先順位」
「・・・・」
「亜豆が一番で・・・亜豆しか恋愛フィルターで見えないっていうか」
「・・・知ってます。・・・伊万里さんが仕事は出来るのに恋愛下手な事。よく知ってて・・・だからこそ腹が立つくらいにその言葉に重みを感じる」
「・・・うん、」
「・・・悔しい」
「うん、」
「伊万里さんもサラッと酷い、酷すぎる」
「うん、・・・だからさっさと見切り着けちゃえばいいんだよこんな奴」
「っ・・・だから、・・そういうとこで見切り着けられなくなっちゃうんじゃないですか!」
「・・・ん?・・えっ?」
自分が如何に最低で情のない一言で突き放していたかくらいは分かる。
嫌われ今までの関係に距離が出来るのは寂しいけれど、その言葉を撤回しない強い意思はあって。
よそ見はしないのだと、亜豆一筋で見込みがない最低な俺なんて見切りを着ければいいと促したのに、これまた思っても見ない小田の切り返しに間抜けな顔を見せた気がする。
そんな俺に痛みを見せていた顔に改めて何かを燃やしたような挑み顔で見上げてくる小田には気迫負けもしてしまいそうな。



