それでも、さすがにそんな空気に小田も気まずさが限界だったのか、それを破るようにフゥーっと深い息を響かせたかと思うとようやくまっすぐにその視線を寄越して。
「・・・すみません。嫌な女でしたね私。・・・正直ワザとです」
「へっ?ワ、ワザと?」
なんか変化球が来た。
てっきりこの話を切り上げるべくな流れになるのかと思っていた自分には衝撃的な予想外と言うのか。
そんな問題発言をした小田と言えばあからさまで大げさな程のムスッとした表情をこちらに見せていて。
そんな表情に戸惑いの視線を返すと、もどかし気な息を吐いてから俺に挑むように、
「嫌な女するしかないくらいに悔しいんですよ。彼女が【亜豆さん】だったって知って」
「えっ?・・はっ?な、何で??」
「だって、だって伊万里さん、最近まで亜豆さんの下の名前の呼び方さえ知らないくらいに興味なかった癖に、」
「っ・・お、おお、確かに、」
「納得します!?しますよね!そんな伊万里さんだったのに、どっちかと言えば私の方が親密であった筈なのに・・・・っ・・トンビに油揚げぇ」
「小田・・・ちょっと落ち着け。なんか言動が愉快な事になってきてる。・・・つまり俺は油揚げなのか」
言葉を綴れば綴るほど感情が爆発したかのようにエキサイトしていく小田はなんだか新鮮だ。
最終的には嘆くように両手で覆った顔には赤みも射していて、そんな姿からくぐもった声で『悔しいぃぃ~』と小さく響くことには・・・、
「フッ・・・」
思わず噴き出してるダメな俺がいたりする。



