いや、一応けじめをつけてきちんと振った関係だけども、それでも小田からは好きでいる宣言をされてしまっているからなんだか気まずい。
それに亜豆に釘を刺されたばかりでのこの状況も浮気ではないのに変に落ち着かずもどかしさが募る。
何をどう切り替えしていい会話の途切れか。
そんな間にもデパートの社員が度々俺たちの横を通り抜けていくのを何の気なしに見送ってやり過ごしていれば。
「・・・・彼女って・・・亜豆さんだったんですね」
「ああ・・うん、」
「井田さんは亜豆さんは社長と付き合ってるって言ってたのに、」
「あー・・・それ・・・亜豆であって亜豆じゃない。えっと・・とにかく誤解。亜豆は俺の・・彼女・・です」
「・・・伊万里さん、地味に傷つきます。言うの躊躇う癖にそれでも主張しないではいれない感じに惚気がダダ漏れというか。躊躇った分余計に【彼女】って響きが強調されてました」
「・・・すみません」
いや、いやいやいや、謝る場面なのか俺。
決して何一つ間違った事も言ってないんだから謝るなよ俺。
そんな事を思えどやはり堂々とはしにくい空気にどうしたものかと首の裏に手をやり心の中で息を吐く。



