今日の約束は特別していなかった。
それに明日は平日で誘っていいものなのかも躊躇われていたのに、やはりどうしても2人の時間を設けたくて迷いながらも誘いの言葉を切りだし始めれば、その言葉を待っていたかのような亜豆の切り返しに負かされる。
誘われる下心なんて言葉に馬鹿みたいに逆上せ上がる。
「ったく、・・・・お前って本当に狡い」
「っ・・!」
本当・・・キャラじゃない。
人前で、しかも仕事がらみの場所で感情的に動いて恋人にキスとか。
掴んでいた腕を引き寄せて、その勢いのまま唇を重ねてすぐに離す。
キャラじゃない行動に言い訳をするのならあまり人目につかないツリーの裏側だった事と、キスしたと言っても一瞬の接触。
このくらいならありだろうと自分に言い訳しながら顔の距離を開ければ、至近距離で捉えた亜豆の丸々と驚愕に見開いた双眸。
でも、すぐにその双眸の下の肌を赤く染め挙げ、今の出来事を反芻し堪える様に口元を手で押さえると、
「伊万里さんって・・・狡いです」
「お前が言うな」
「本っ当・・・なんでそんな可愛いですかね」
「それもそっくりそのまま返すぞコノヤロウ」
本当・・・馬鹿全開。
クリスマスムード万歳とでも言っておこうか。



