心底『好き』の感情一直線だと、しみじみ感じながら感触のいい白い頬に指先を這わしていると、
「・・・どっかにヤドリギないですかね?」
「フハッ・・・お前、・・・・その意図は『キスされたいです』って都合のいい解釈していいのか?」
「・・・冗談です。・・・ほら、さすがにお仕事に戻る時間では?こんな人目があって、しかも仕事の場で馬鹿になれとは言いませんから」
言いながら押し出すように軽くトンッと胸に触れてきた手の感触。
冗談だと付属され、冗談【らしく】クスリと笑った亜豆の表情に嫌味はない。
確かにもう仕事にその身を戻すべきで、送り出してくれたこのタイミングはベスト。
それでも、そのまま体を離すでもなく、むしろ胸を押した亜豆の手を掴むと、
「えっと、・・この後、」
「・・・・一階のワイン専門店に居ます」
「えっ、」
「待ってますから。・・・ちょっといいワイン折半しませんか?」
「フッ・・・誘われ上手」
「だって、誘われる下心でここに出向いたんですから」
当然です。と悪びれず、羞恥もなく、ただ楽し気にクスリと笑う亜豆に『負けた』と何度思えばいいのだろう。



