スッとこちらに移ってきた眼差しは『何?』と問いかけてきているのは明確で、それに感情のまま小さく笑うと、
「可愛いなって」
「・・・・浮気しました?」
「何でだよ・・・。ってか何で速攻でそんな切り返しになるんだよ?お前の思考本当によく分からねぇ」
「いや、私って嫉妬の塊じゃないですか。ですから昨日のキスした事件は案外根に持ってますからね?」
「持ってたのかよ!?そんな淡々サラリとしてて?」
「しますよ。女舐めてるんですか?心の中では掴みかかっての取っ組み合いなんてザラですよ」
「恐いよ。何が恐いってお前が言うからなんか余計に恐い」
まったく動じてないような姿の内側にそんな本心秘めてたのかよ。と、それを見透かすように目を細めてみるも読み取れる筈もなく。
終始無表情の亜豆は相変わらずどこからどこまでが本気で冗談なのかも分からない。
でも、口にするって事は少なからず嫉妬している事は確かなんだろうな。
なんて、苦笑いで溜め息をついていれば、そんな俺との距離を詰めてスッと伸びてきた両手が俺の頬を包むように固定して覗き込む。
「・・・で?」
「・・・『で?』って?」
「しました?」
「何を?」
「浮気。小田さんとまたキスしたんじゃないですか?」
「しねぇよ!お前、どんな被害妄想?」
「被害妄想じゃないです事実に基づいた予測と可愛い嫉妬でしょう。伊万里さんはもっと私のものだって自覚持ってください。私のですからねっ?『少しどーぞ』なんて分け与える気もないくらい余すとこなく全部私のですからね!」
「っ・・・お前・・本当、くっそ腹立つのに可愛いなっ」
なんだよそのいきなりの独占欲。
今までは自己満足ばっかだった癖に。



