私が再び現実に戻ったのはあなたの姿を追うためだったんですよ?


約束を果たそうと、鬱陶しい前髪を切り、身なりを整え不足していた教養を休むことなく埋め合わせた。


海音くんがすでに大手広告会社の重役で、前向きになった私に惜しみなく色々とその知識も授けてくれた。


その内に、何の因果だったのか・・・運命だったのか。



「クリエイティブに有望そうな新人の内定が決まったんだけど?」



必死に世の中に追いつこうと躍起になり始めていた私に海音君がもたらした朗報。


今も忘れない。


私の部屋のドア枠に寄りかかって、持っていた書類をチラつかせて少し意地悪く笑う海音君の姿。


呆ける私に静かに差し出してきた書類は内定者の名簿と、クリエイター志望にだけ出された課題の写真。


課題はテーマは問わずな架空のポスター案とでも言うのか。


一からデザインした物と写真を使ったもの計2枚。


その年にクリエーターで採用されたのは2人。


その内の一人の名前に【伊万里 和】と名前があって、ポスター案の一枚が、



「っ・・・・」


「この後ろ姿・・・どっかで見た事ある気がするの俺だけ?」



そんな含みのある言葉を残して部屋を出ていった姿に意識も移らない程ポスター案に映る自分の姿に心がざわめいた。


熱くて熱くて・・・。


少しは・・・彼の記憶に自分は存在しているのだと感極まったのを今も忘れない。