カシャッ。
背後から響いた音は携帯のカメラのシャッター音だ。
それに引かれて振り返ればさっきまで景色に意識を向けっぱなしであった彼が、携帯をこちらに構えて『激写』とにっこりと笑ってくる。
それには最初キョトンとするもすぐに力なく口元に弧を描いたのは無意識。
「普通・・・危ない!って心配しない?自殺するんじゃ?ってハラハラするとか」
何でそんな呑気に写真撮れるかな?
どう見ても私って自殺しそうな雰囲気たっぷりの姿だと思うけど?
自殺願望なんてないけれど自分の装いはそれをしてもおかしくないものだと自負している。
だからこそ楽天的にそこにある彼にはどういう神経なのだと呆れたように笑って問いかければ、
「死なねぇよ・・・お前」
「・・・何で?」
「死にたがってる目はしてねぇし。まぁ、でも・・・全部が面倒くさい。って顔は最初からしてたかな」
「・・・・・」
「構わないから構ってくれるな」
「・・・・・」
「そんな感じで周りを避けて周りから避けられて・・・だから、近づいたのかもな俺」
「・・・・えっ?」
これは・・・思ってもみなかった切り返し。



