「おぉー・・・いい眺め」
「・・・・」
「って、何でまただんまりスタイルに戻ってるんだよ、・・・おいっ」
「っ・・・」
ぬぬっ、足カックンとな?
彼の要望通りにデジカメに収めてあった写真の屋上に、交通機関乗り継ぎ案内をした。
私と言えばカツアゲ事件のせいで、・・・それ以前にお金を持ち合わせていなかったから彼のおごりで移動したわけだけども。
そうして移動すれば眺める景色は都会のビル群からガラリと変わって海沿いの田舎町と言うところか。
高台にある古くてもう誰も済んでいない団地の屋上。
そこから見る景色は町並みから海までを一望できて自分の特別と言える秘密の場所でもあった。
なのに不思議な成り行きで初めて会った人をここに案内した。
扉をくぐってこの景色を捉えた瞬間に分かりやすく感嘆の声を上げて反応を見せた彼。
それに特別反応を返さずフイッと景色に視線を動かせば、それが意識を引いたのか『だんまり』だと指摘し、尚且つ私の膝の裏を軽く蹴る事で膝カックン。
いや、決して痛くない力での蹴りなのだ。
それでも『なにするんだ』とばかりに非難的に振り返れば『んっ?』と理由を求める様に笑んでこられて静かに視線を逸らしてしまった。



