オフィス街の雑踏の中だ。
ただでさえ異色の自分であるのにしゃがみ込んで泣きじゃくっているのだから余計に目を引いている事は分かっている。
それでも、どうしてもその涙の止め方が分からず、膝に顔を埋めてグスグスと鼻を鳴らしていれば。
そんな私を慰めるが如くポンポンと頭を撫でてくる感触には顔を上げざるを得ない。
そうして視界の悪い顔を上げて捉えた姿は同じように私の前にしゃがみ込んでニッと口の端を上げてくる。
その瞬間に・・・なんかイラッとした。
ってか・・・
「へラッとするな!ってか、何で私がこんな必死!?何で私がこんな泣かなきゃなわけ!?何で当事者のあなたが笑ってるわけ!?もっと焦って落胆して取り乱せ馬鹿っ!!」
「ぶっは、っあははははは、」
「笑うな!!ばーかばーか!!本当に馬鹿すぎるぅぅぅ!!」
「いやぁ、なんか青春ドラマのワンシーンを見たようで面白かったから」
「面白いわけあるか!!」
「いや、面白いよお前」
「私かよ!?」
「うん、お前」
なんでこの人はこんな楽天的なんだろう?
どこから来たかは知らないけれど一応入社試験の為に来たんでしょう?
少なからず人生の岐路で、就職難なご時世一つでも多く安定した会社の内定を欲しいだろうに。



