本当に今この場で一緒でなくてよかったと思いながら、傷の具合を見に鏡の前へ。
確認すれば出血と言ってもすぐに自然と止まるであろう微々たるもの。
それでも引っ掻いた傷は案外くっきりはっきりと残っていて見た目かなり痛々しい。
コレ、人から見たら結構えぐい気もする。
あーあ、と肌に明確な傷に触れれば当然ヒリッと痛み眉根を寄せる。
そんな事をしていれば、一瞬通話中である事を忘れてしまっていた。
遠巻きに『おーい、』とか『もしもーし』なんて声が微かに聞こえ、面倒だと顔をしかめながらようやく携帯を耳に戻した。
「ん、ってか、特に用がないなら切っていい?」
『えっ!冷たい!!』
「だって、これと言って興味ない事ばっか話してるし、首の手当したいし」
地味に痛いなぁ。と、今してる会話にも意識は虚ろ。
絆創膏でも貼っておこうかと救急箱の収納してある棚に向かって、片手では取り出すのが不便だと眉根を寄せる。
「じゃ、切るよ、」
『ちょっと待って、じゃあ一つだけ!』
「んん~?もう何?早く__」
『俺の事嫌い?』
「・・・・・」
一瞬、傷の痛みも片手の不自由さへの不愉快も、全部全部意識が飛んだ。
飛んで・・・一つだけ浮き彫りで鮮明に残ったのはミケの真面目な声の真剣そうな問いかけ。
それに特別悩むでも考えるでもなく、ストンと落ちてきた感情を口から音のつぶてにしてはじき出す。
「好きに決まってるでしょ?」
何を言っているの?と、心でだけ言葉が続く程迷いのないミケへの返答だ。



