なんと言うのか・・・、少なくともこの場の勝敗はすでについているような。
「結論、」
「っ・・はい、」
「嫉妬の感情はあるので引っ付かれたり誘惑されるのは面白くはないんです」
「あ・・そ・・そうなんですか」
「でも、不安かどうかと言われれば・・・然程」
「然程!?」
「だって・・・、」
どこまでも亜豆節。
嫉妬はするのに不安はないとか、やはり矛盾して感じるのが普通の感覚だろう。
だから小田の反応は正常だと思うんだ。
でも、そうやって戸惑った流れで亜豆を節を追及してしまえば結果してやられて終わるんだぞ。と、心で助言をしたまさにそのタイミング。
『だって』という声音と一緒に俺の胸元に伸びてきた亜豆の手。
そのままコートの襟先をキュッと掴んで僅かに引き寄せ亜豆からも近寄って。
視線が絡んだ瞬間にフッと笑った表情の愛らしく綺麗な事。
「コレは私ので、・・・不安も飛ぶほど私に夢中な生き物ですから」
「っ・・・」
「少なくとも私は、ちょっとやそっとの誘惑に怯んで不安になったりはしません」
まっすぐな言葉は俺と小田のどちらに向けてか。
いや、多分両方にか。
でも、その揺らがない意思の表示の視線は俺だけに。



