だから何ですか?Ⅱ【Memory】





ものの見事な亜豆節と言うのか。


終始落ち着き払って表情も口調も乱さず言葉を連ねる亜豆と、そんな亜豆の発言に終始驚きっぱなしの小田の姿。


当然の疑問だろう。


自分としては横恋慕をあからさまにしていたつもりで、目撃されても堂々と俺の服を掴んで見せて対抗意識を全面だったのだ。


なのに肩透かしのように亜豆はどこまでも感情を見せず、下手したら無興味の如く他人事の様な感覚で持論を語る。


俺としてはそんな亜豆には慣れつつもあり、それでも小田の戸惑う当たり前の反応も分かるから苦笑い。


とうとう返す言葉に詰まって呆ける小田の姿に、ハァッと溜め息をついた亜豆が俺の身体をそっと手で押しながら開きっぱなしであったエレベーターから降車させて自分もフロアへ。


カツンと亜豆のヒールの音が響いた直後に静かにエレベーターは扉を閉めて下降し始める。


そんなエレベーターを見送っていた亜豆が改めて俺と小田に意識を戻すと。



「勘違いしないでくださいね。嫉妬の有無を語れば私のそれは計り知れないくらい幅広くですから」


「えっ?・・えっと・・」


「私以外の物全て。・・・人でも物でも仕事でも、伊万里さんが意識惹かれるものは全部私の嫉妬対象です」


「・・・・っ・・心狭い!」


「はい、もう激狭でそんな自分は自覚済みの美点です」


「び、美点?」



ああ、もうコレ笑っていい展開なんかな。


修羅場である筈なのに修羅場になりきらないこの空気は喜ぶべきなのかどうなのか。