そんな問いかけをするか?と、今度は小田の反応を伺うように振り返れば、さすがに亜豆の言動行動にポカンと呆けている姿がそこにある。
そりゃあ・・・そうだよな。
多分今までの亜豆の印象の崩壊。
小田も何かしら憤り感情的な姿で責め立てられるような展開を思い浮かべていたのだろう。
なのに温度差大きすぎるこのドライ対応。
どこまでも冷静に『どうします?』なんて問いかけられて、きっとその言葉が本気なのか冗談なのかと判断に迷っている困惑状況だろう。
その小田の心境・・・なんか物凄くわかる。
ちょっと前まで俺も同じ戸惑いに振り回されてたからな。
そんな事を思いながらこの絶妙な修羅場にどうしていいものかと頬を掻いて不動でいると。
「えっと・・・あれ?怒ったり・・しないんですか?」
おお、小田、それはナイスな突っ込みであり、ますます困惑に突き落とされるだろう言葉だぞ。
「怒る?・・・特別憤りに達する感情は沸いておりませんが?」
「えっと・・えっ?だって・・・えっ?私と伊万里さんあんなじゃれあって引っ付いて、」
「はい、仲睦まじく実に楽しそうでしたね」
「私伊万里さん好きなんですよ?」
「らしいですね」
「『らしいですね』って・・・、もっと嫉妬して怒ったりしないんですか?」
「・・・・・嫉妬して怒る。・・・それって必ずしもイコールしなければいけないものなんですかね?」
「へっ?」
ああ、小田。
何と言っていいのか・・・同情して笑ってしまいそうだ。
すまん。



