「リオ、」
「っ・・・帰って」
「今更過去の自分の妄想恋愛に羞恥心?」
「っ・・・私が始めたみたいに言わないで!!持ちかけたのはミケの方からなのに、」
「そうだよ」
「っ・・・」
「持ちかけたのは俺。そうでもしないと俺と恋愛しようなんて思わなかったでしょ?あの頃からずっとリオの目に映るのは伊万里 和ばかりだったもんね」
「思い出話なんてする気ない!帰れ!」
カップの中身ももう殆どない癖に。
暖も取れただろう!と出口を指さし、ミケのコートを本人にばさりとぶつけて体を押した。
・・・筈が、
「っ・・・」
手首に絡んできた指先の感触に驚きの声を発するより早く世界の反転。
掴まれ引かれ、何がどう動かされたか分からぬままようやく身体が安定した時には背中に感じる馴染みのあるソファの感触。
視界に映りこむのは・・・懐かしい。
酷く懐かしい・・・。
こんな風にミケに組み敷かれ見下ろされるのは酷く懐かしい。
懐かしいけれど追体験、再体験したいなんて微塵も思っていなかった。
胸の奥でドクンと跳ねた心臓はときめきなんて甘い鼓動ではなく危険予測の信号音だ。



