懐かしいとジワリ感傷に浸る心は偽れない。
それでもそれに浸りきらないと、屈しないと、ミケ曰くストイックな私の方が優勢にあって。
如何にも感傷に流されムード盛り上がりキスの一つでもかますシーンだろう。
それに則っていつの間にか私の頬に添えられていたミケの手と至近距離に寄っていた端正な顔。
させるものかと咄嗟にミケの口元を手で覆って軽く押し返せば、掌に笑った様な息がかかって綺麗な水色が悪戯っぽく私の双眸と対峙した。
「流されてくれないか」
「当たり前。私にこういう事していいのは伊万里さんだけなの」
「伊万里ねぇ。伊万里がなんぼのもんじゃい!ってついつい見に行っちゃったけど・・・思ってたより普通」
「伊万里さんの良さは私が十分に知ってるからいいんです!私にとってはミケなんかの100倍も1000倍も良い男なんです!」
「その100倍も1000倍も良い男な伊万里さんとはもう寝たの?」
「露骨に確認するな」
「いや、だってねぇ。色々聞きたいじゃない?」
フフッと含みたっぷりな妖しい笑みは嫌味も混じっている気がする。
それに負けるかと挑むように目を細め眉根も寄せて水色に対峙したというのに。
「っ・・ひゃっ、」
ミケの口元を覆っていた手を逆に掴まれ、おもむろに甘噛みされて舐められた感触に完全に突き崩された。



